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2005年02月21日

著作権を勉強する--私的複製

こうやってサイトを立ち上げて何か書いたり、ネットラジオをやったりするという時に、どうしても避けて通れないのが著作権。普段それほど気にしないでやっていることが実は著作権侵害だったということがあったりします。私も一応著作権を簡単にお勉強しましたが、それでも個々のケースでそれが著作権侵害か否かと問われると判断できないケースがたくさんあります。というわけで、ちょっとお勉強をしようかと文化庁のサイトを見ていたら面白いものがありました。

クリックするたびに著作権がわかる!楽しみながら学べる学習ソフト

ソフトには小学生用と中学生用があります。私向きです。早速ダウンロードしてやってみました。両方とも40問の質問に4択で答えます。全体的に小学生用のほうがとっつきにくくて難しいという印象を受けました。間違えたものも何問かありました。まあ、給食時間中の「お昼の放送」で音楽を流す場合は許諾を得なければならないか等という設問は、私にはあまり関係ないから間違えてもいいかなと思います(とても悔しいです)。

少々気になるところもありました。設問を引用します。

他人にあげるために、市販のCDを作者に無断でMDに録音することについて、正しいのは次のどれ?
1.お金をもらわなければ作者に無断で録音してもよい
2.自分が買ったCDなら作者に無断で録音してもよい
3.MDやCD-Rのようなデジタル録音以外なら、作者に無断で録音してもよい
4.作者に無断で録音してはいけない

これの正解は4です。
自分や家族など限られた範囲で楽しむ以外で、市販の音楽CDなど著作物をコピーする場合は、作者の許可を得なければいけません

という解説がつきます。この設問ではクラスメートを「他人」と定義しているように見受けられます。著作権法第30条では、私的複製の範囲を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲」と定義していますが、たとえば中学生にとってクラスメートに音楽をコピーしてあげるのが私的複製の範囲に入らないのなら、「その他これに準ずる限られた範囲」はいったいどういう範囲なのでしょう。

文部科学省が2005年1月24日に出した「著作権法に関する今後の検討課題」には「私的使用目的の複製の見直し」という項目があります。

「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」第9条第2項や「著作権に関する世界知的所有権機関条約」第10条では、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない場合には、権利制限が可能とされている。このような条約上の制約や私的使用目的の複製の実態を踏まえて、認められる範囲の明確化など、私的使用目的の複製の見直しに関して検討する。

そうです。しかし、文化庁的には範囲の明確化についての結論が出ているようですね。

私が学生のころ、友達とよくレコードやCDの貸し借りをしていました。借りてみていいなと思ったものは必ずダビングしました。これから先は「著作権侵害」になるのでしょうか。また、好きな人のために「マイベストセレクションカセットテープ」を作ってあげるような行為もダメなのでしょうか。

昨年著作権法を改定してまで行われた「還流防止措置」ですが、現在あまり利用されていないようです。まだ評価は早いかもしれませんが、何のためにすったもんだやったのかよくわかりません。著作権の今後を検討していただくのはいいことだと思いますが、やるのであればきっちりと効果が出て、音楽産業の人やリスナーみんなに「やってよかった」と言われるような改定であってもらいたいものです。

[著作権] 投稿者 manolin : 2005年02月21日 23:09

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コメント

そんなもんは
原則。製作者が決めるのであって国家の関与は控える。

投稿者 もうちょっと勉強してください : 2005年02月22日 07:33

>そんなもんは
>原則。製作者が決めるのであって国家の関与は控える。

ちょっとこれだけでは仰りたいことの意図がわかりませんが、原則論としてはその通りだと思います。ただ、現状その原則論どおりにことが運んでいないものだなあと思っています。

投稿者 manolin : 2005年02月22日 08:20

> 4.作者に無断で録音してはいけない

 正解しました。

> クラスメートを「他人」と定義しているように見受けられます。

 私はクラスメートは間違いなく他人と思いました。

> 著作権法第30条では、私的複製の範囲を
> 「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲」と
> 定義していますが、たとえば中学生にとってクラスメートに
> 音楽をコピーしてあげるのが私的複製の範囲に入らないのなら、
> 「その他これに準ずる限られた範囲」はいったいどういう範囲なのでしょう。

 この条文は知りませんでした。また、法律がどういう範囲を想定しているのかは解りませんが、少なくともクラスメートは入らないと思いました。
(強いて例をあげれば長期的に預かっている子供、などでしょうか。)

> 私が学生のころ、友達とよくレコードやCDの貸し借りをしていました。
> 借りてみていいなと思ったものは必ずダビングしました。
> これから先は「著作権侵害」になるのでしょうか。
> また、好きな人のために「マイベストセレクションカセットテープ」を
> 作ってあげるような行為もダメなのでしょうか。

 両方とも侵害になると思っていましたので、貸し借り・ダビングはしませんでした。借りて良ければ買う。ダビングはそれを著作権者の許可を得ずに邪魔していると思っていました。違反していると思っていなければ、もっと気楽に音楽を楽しめたでしょうに、寂しい子供だったですね(笑)。今でも会社の同僚にソフトのCDを貸すのは侵害になると思っています。

 同じ法律にも色々な読み方、伝わり方?、考え方があるのですね。勉強になりました。

投稿者 zuno : 2005年02月22日 22:26

>zunoさん

こちらこそ勉強になります。

あの設問にけちをつけたのはは伏線がありまして、小学校編では「音楽CDをクラス全員にあげるためにカセットテープに録音していいか」という問題が出たのです。当然答えは「いけない」わけですが、この設問では私的複製の範囲を明らかに超える範囲を出してきたわけです。ところが中学校編になると、クラスメート一人でもいけないと取れる解答を出してくる。これは随分と解釈に踏み込んできたもんだなと思ったのです。

ちなみに私は音楽はダビングしまくっていましたが、PCのソフト(当時はカセットテープが主流)のダビングはしませんでした。これはやってはいけないことだと思っていました。今考えると変な線引きですが。

そして中学生編の問題で出てくるのですが、レンタルCDを自分のためにダビングする時は?という問題がありまして、正解は誰の許可も得ずにダビングしてもいいとのことでした。かつてレンタルCDというビジネスがあるから日本の音楽産業が発展しないと言ったミュージシャンがいたと記憶していますが、確かにせっかく作ったCDを買わずにレンタルでダビングしてもいいと言われてしまったら頭にくるのも理解できます。

著作権という囲い込みの権利の中で、私的複製は著作権者と利用者、使用者(リスナーなど)とのバランスを取る重要な部分だと思います。著作権法の中のバランス、zunoさんの中のバランス、私の中のバランスは異なっていてどれが正解というものもないと思います。インターネットがどんどん普及していく中で、そのバランスはどう変わるのか、またクリエイティブ・コモンズようなオルタナティブなものが対応するのか、正直ベースで言うとよくわからないのですが、考えを深めていきたいと思っています。

投稿者 manolin : 2005年02月23日 00:27

manolinさん、丁寧な解説と返信ありがとうございます。

> 中学校編になると、クラスメート一人でもいけないと取れる解答を出してくる。
> これは随分と解釈に踏み込んできたもんだなと思ったのです。

 違った解釈をする人がいて解釈が問題になっていると言うことですね。勉強になります。

> 今考えると変な線引きですが。

 音楽とソフトには細かい相違がありますけれど、保護すべき対象としては同じなのかと思いました。

> レンタルCDを自分のためにダビングする時は?という問題がありまして、
> 正解は誰の許可も得ずにダビングしてもいいとのことでした。

> レンタルCDというビジネスがあるから日本の音楽産業が発展しないと
> 言ったミュージシャンがいたと記憶していますが、

 他人が所有する著作物を借りてコピーしても良いというのが解らないのですよね。
レンタル料に著作権料が含まれていて、ちゃんと権者に渡る場合は良いと思います。

 中学生の頃、小さな街にレンタルレコード屋ができて2度借りましたが、罪悪感を感じてダビングしませんでした。以来、利用料を払う仕組みが作られたのかも知れませんが、レンタルはしていません。矢沢永吉とマンハッタントランスファーでして、約10年後、社会人になってからマントランだけCDを買いました。

> 著作権という囲い込みの権利の中で、私的複製は著作権者と利用者、
> 使用者(リスナーなど)とのバランスを取る重要な部分だと思います。

 元々は、立場的に弱い権利者が権利を保護して欲しい/保護すべきといった発想から法律が作成されたような気がするので(現状がどうであれ、他人がどうであれ)、どうしても著作権者の利益を(後二者については制限しがちに)考えてしまいます。利用者、使用者の立場からは、公平な利用/使用方法が作られることを望んでいます。

 問題意識としては、ダビング前提のレンタルは良いのか?。海外の海賊版を放置している。テレビ・ラジオ局に頭を下げて「楽曲を使って下さい」と言いつつ、ネットラジオには楽曲を使わせない。CDが傷ついたときのためにコピーを取って使うことが制限される。デジタルメディアへのコピーは私的であってもメディアなどに知らないところで課金されている、などについてです。

 現在、団体職員としてルールの案を作る立場にいますが、小さな集団であっても多くの立場やケースを考慮したルール作りに苦慮しているところです。

投稿者 zuno : 2005年02月23日 21:25

「著作権の私的使用」について調べていたら偶然、こちらにたどり着いたのでちょっとご意見をば・・・

私は、今、写真と音楽をミックスさせて楽しめる「フォトシネマ2」というソフトにはまっております。
それが高じて、そのソフトの応援サイトを作りました。(只今、リニューアル中)

友達の結婚式に、そのフォトシネマを使ってBGMを入れて映像を流したところとても喜んでもらったのが、そもそものきっかけ。
しかし、よく考えてみるとこの行為は、著作権法違反にあたるんですよね。
BGMに使用した音楽が、レンタルビデオ屋から借りてきた音楽からMP3にしたものですから。大学時代の友達は他人な訳ですから、私的使用の範囲を超えていると判断されてしまえ場の話ですが・・・(これが、私の兄弟や親戚とった身内であればOK)

そういったこともあったので、応援サイトを作るに当たり著作権について勉強したところ、「使用料を支払っての使用は可能らしい」ということだったのでまずは、JASRACに問い合わせてみました。

しかし・・・・

レコード会社に問い合わせ、作詞家・作曲家など音楽製作に関わった人の承諾をもらった上で、申請してもらわないと、使用料を払う払わない以前の問題とされ受付すらしてくれません。この辺りの話は、著作隣接権にあたるのでしょう。
途中の解説における

>自分や家族など限られた範囲で楽しむ以外で、市販の音楽CDなど著作物をコピーする場合は、作者の許可を得なければいけません

に当たるところですね。

それではと、レコード会社に問い合わせてみると、個人向けにはそのような対応はしていないとのこと。
試しに大手と言われるレコード会社数社に同様の問い合わをしてみたところ、どこも同じような反応。

こっちが使用料支払う気満々でいても、結局、曲は使用できない。仮に使用料を取るといっても、うん十万、うん百万請求されるのがオチでしょう。

これじゃ~、違法コピーが減らないわな。

国が法律を見直したり、業界や著作権に関する団体が、著作権法を侵害した者をつるしあげるといった行為をして、「ダメ絶対!」というムチを振るうだけでなく、個人でも気軽に使用料を支払って曲を利用できるようなシステムを構築してもらいたいものです。
それでも、違法コピーはなくならないでしょうが、少しは、違法コピーによる損失の穴埋めはできるのではないでしょうか。

今は、ネット上に流すフォトシネマについてはロイヤリティフリーの曲を使ってしか行っておりませんが、私的使用目的でのフォトシネマはバンバン作っております。しかし、限られた人にしか見せられないので、ストレスが溜まります。

ほんと、この著作権は、学べば学ぶほど、奥が深い。

投稿者 みずすまし げんごろう : 2005年07月27日 12:40